研究テーマ

1.前近代オスマン朝社会経済史

 学生時代から継続している研究テーマ。具体的には前近代とくに16世紀のスレイマン1世治世期(1520~1566年)において、オスマン朝が広大な版図を如何に統治していたのかを、一種の軍事封土制である「ティマール制」がどのように機能していたのかを、東アナトリアのマラティヤ地域(旧ドゥルカドゥル侯国領)における「検地帳(tahrir defteri)」を基本史料として分析しながら進めている。
 とりわけマラティヤ地域に施行されていた変形「ティマール制」である「マーリキャーネ・ディーヴァーニー制」がオスマン朝による東アナトリア統治過程を示すものとして強い関心を抱いている。

2.日本・トルコ関係史

 大学奉職後に始めた第2の研究テーマ。具体的には日本・トルコ関係史の基点と言われる「エルトゥールル号事件」(1890年)について、それまで判然とはしていなかった同艦が帰途についてから海難に会うまで、海難後の日本側の官民の救済・義援策についてなどを解明した。この過程で忘却されていた、イスタンブルに滞在した初の日本人である野田正太郎の事績を解明し、また中村商店やコンスタンチノープル(イスタンブル)日本商品館、在外武官・駐在武官、大使館などについて日本およびトルコにおいて様々な史料を発掘・分析しながら、両国の関係史を個人ベースで研究している。
 「エルトゥールル号事件」については近年関心が高まり、自分自身も各種メディアとの付き合いも生じたが、なかには史料を無視し、史実を捻じ曲げたり、徒に美談化していこうものが見受けられる。気負う訳ではないけれども歴史研究に従事する者として、史料の発掘・精査で史実を解明することで応えていかなくてはと考えている。

3.日本とイスラーム世界

 「2.日本・トルコ関係史」に連動して、とりわけ戦前・戦中期において、日本がイスラーム世界をどのように認識し、どのような関係を構築していったかを研究している。研究として着手してから日が浅いものの、実は学生時代から関心をもって関連する当時の書籍・雑誌を収集してきた。研究過程で学外の諸研究プロジェクトに参画し、早稲田大学中央図書館所蔵の旧大日本回教協会資料、島根県立大学メディアセンター服部四郎ウラル・アルタイ文庫所蔵資料、山形県酒田市大川周明顕彰会の皆さんと関わらせていただくなど、様々な方にお世話になりながら多くの研究者仲間と共同研究の形で史料発掘・調査・分析を進めている。